【実験への返答】

ゴールデンウィークの最中、「実験」というお知らせが
HP上に出たのをご存知でしょうか?

この「実験」に参加を希望された方すべてに、
詩人の文月悠光さんの書き下ろしの作品をお送りし、
感想をいただきました。

実に40名ほどの方の参加をいただき、
ほぼ実数に近い感想を寄せていただきました。

すべて、文月さんに読んでいただき、
ナナロク社の日(7月6日)に、
文月さんから感想をいただきました。

夏のお盆の最中、
ブログにて発表させていただきます。

ご参加いただいた方も、
参加されていないかたも、
ぜひご覧くださいませ。


======================

〈詩を送る〉にご参加くださった皆さんへ

はじめまして、文月悠光です。
先日は拙詩「教室という小箱」をお読みくださり、ありがとうございました。
たくさんの丁寧なご感想をいただき、胸がいっぱいになりました。
2年前上京してきた頃、しきりに気にかかっていたのは、詩に関して読者や編集者からなかなか反応が得られないことでした。自分以外に判定者がいない不安から「これでいいのか?」と揺れることもありました。詩には作者以外の人が立ち入ってはいけない、触れてはいけないという壁があったように思います。
ですから〈詩を送る〉という今回の実験は、私には少し怖いことのような気がしました。けれども、いただいたご感想の一つ一つから確かな熱を受け取りました。皆さんが私の詩を受けて打ち返してくださったのだ、という実感を得ることができました。本当にありがとうございます。
作品自身が手紙を書くことはできないので、作者の私がご感想の紹介も兼ねてお返事したいと思います。

・思い浮かんだ光景を文章・詩で表現してくださった方
(拙詩から切り離して拝読しても味わい深いものばかりでした)
・“小箱”の展開図をカラフルな工作で表現してくださった方
(とにかく驚きました。詩の言葉がほどかれた心地がしました)
・「秘密を分けてもらうみたいにそっと封筒を開けた」方
(ありがとうございます。その秘密を周りの親しい方とも是非共有してください)
・「初めて読んだ時には何が何だか分かりませんでした」(まっとうだと思います)
(その上で)「これを機に文月さんの他の作品や、その他、色々な詩を読んでみたい」(と思ってくださったあなたは非常に勇ましいです。ありがとうございます)
・「感想ですが、物足りない、です」「一冊の詩集の中の一編として読みたい。第二詩集、待望しています」(待っていてください!)
・「もしこの詩の中の女の子に伝える言葉があるとするならば『それでいいよ』という一言でしょうか」(ありがとうございます。心から聞かせてあげたいと思う一言です)
・「僕は短歌をつくっています。この詩の中にもところどころに5と7の音があって嬉しくなりました」(私も歌を詠みます。7・7の音を見つけると特に心が浮き立ちます)

世代も立場も様々な方からご感想をいただきましたが、共通して〈教室〉への思い入れの強さを感じました。ついこの間まで高校生だった方、学生時代は20年以上前のことだという方……。それぞれのご感想に生々しさ、瑞々しさが滲んでいて、どちらが〈教室〉に近い/遠いということは無いようでした。「思春期のころに、戻って見ていたけれど、これはまったく今でも当てはまるなぁ、と」「いつの間にか、今の自分を重ねて見ているのです」というご感想も印象的でした。〈教室〉で過ごしていた頃と変わらない感覚を、私たちはどこかで持ち続けているのかもしれません。
7月に入り、暑い夏の盛りも間近ですね。実は私、今月で21歳になります……。今回、拙詩集の作品と比較して読まれたご意見も興味深く、初めて拙詩に触れた方のご感想も新鮮でした。両方の読者に訴えるものを書いていきたい、という思いを強くしました。その目標に向かって、力を尽くします。20歳の1年間に負けないくらい、素敵な1年を紡ぎたいと思っています。
今後はナナロク社さんのホームページ内〈水色〉で詩の連載を続けていく予定です。見守っていただければ幸いです。

これからも皆さんへ詩を送り続けます。

文月悠光 拝

2012年7月6日

======================